なぜ日経テレ東大学は潰されたのか?

赤羽彩人投稿者:
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日経新聞の構造的問題も。
ひろゆき・成田悠輔コンビが活躍の100万人登録YouTubeチャンネル「日経テレ東大学」が解散に追い込まれた理由

 2023年2月10日の文春オンラインのスクープ記事の中で、YouTubeチャンネル「日経テレ東大学」の終了を報道した。(文春オンライン(2023/2/10)ひろゆき、成田悠輔で話題 登録者数100万人のYouTubeチャンネル「日経テレ東大学」が終了へ

1. 日経テレ東大学とは?

 日経テレ東大学とは2021年から日本経済新聞社とテレビ東京コミュニケーションズがタッグを組んで始めたYouTubeチャンネル番組。『家、ついて行ってイイですか?』を手掛けてきたテレ東のやり手テレビプロデューサーの高橋弘樹氏が演出から企画・運営までを手掛ける。

同YouTubeチャンネルでは、テレビ・コメンテーターで多数出演の2ちゃんねる創業者のひろゆき氏(46)とイエール大学助教授で売れっ子学者系テレビタレントで毒舌的なコメントで定評のある成田悠輔氏が出演するシリーズ「Re:Hack」や元日経新聞記者で経済系インフルエンサーの後藤達也氏の「あつまれ金融の森」、芸人の田村淳氏や『五体不満足』で有名なタレント・乙武洋匡氏らの出演する企画が展開された。

開始当初の番組のテーマは「本格的な経済・ビジネスを、もっと楽しく学ぶ」(YouTubeチャンネル紹介欄)とある。日経新聞の記事やテレビ東京の経済番組の視聴者というより、「経済に興味はあるがあまり多くを知らない」といったライトな層や10代の中高生など学生や20代30代の働く世代をターゲットにした番組であるといえるだろう。

実際、ライフスタイル系のライトな「投資」話から「老後への備え」といった働き始めの世代から、政治・社会の話題では「女性の社会進出」から「若者の政治参加」、「世代交代」まで明らかに若年層を意識した番組づくりだった。番組内でも成田氏のTwitterにDMを送りつけるという謎の中高生も出演したりするなど見ている側を意図的に引き込む構図があった。

2. 日経テレ東大学が終わった理由

日経テレ東大が終了するという報道があって数日後、さらに週刊文春はその内部事情について詳細に報じている。(https://bunshun.jp/articles/-/60739)

  ただ、実はかなり前からチャンネルの端々に終了をにおわせる出演者の発言があった。昨年の12月ぐらいに撮影したと思われるひろゆき氏とその妻の西村ゆか氏、高橋氏の3名の草津のロケ動画から、少し雰囲気がおかしかった。(これはひろゆき氏自身が自身の動画で説明している。)

さて、ここでは週刊文春の報道内容と筆者自身の推測を交えてなぜ日経テレ東大学が終了したのか述べる。

主な考えうる原因は以下の4つだろう。

出演者もしくはプロデューサーの問題

番組の内容における問題

日経またはテレビ東京の構造的(組織的)問題

外部からの圧力問題

3. 出演者の問題

筆者がこのニュースに接したとき、まず第一に思いついた原因は、出演者の問題だ。

 特に注目すべき人物は、MCだった経済学者・成田悠輔氏や2ch創業者・ひろゆき(西村博之)氏、元日経記者・後藤達也氏、そしてプロデューサーのパンダこと高橋弘樹氏だ。

成田悠輔氏の画像(本人のTwitter画像より)

 直近には成田悠輔氏(38)の2019年2月9日のグロービス主催の社会保障に関するパネルディスカッション内で日本の高齢化問題について「集団自決」を解決策として述べたことで、今年2月12日にアメリカ大手メディア・ニューヨークタイムズ紙に取りあげられるなど物議をかもしている。(この件については、また別の記事で私の分析や意見を述べる予定だ。)成田氏はメタファー(隠喩)であるとして釈明していて、議論のやり方として一理あるが、ニューヨークタイムズへ記事が掲載されたことでアメリカ国内でも日本国内のSNSで炎上している。

 ただ、成田氏の炎上騒動は今年(2023年)から盛り上がってきた感があるので、後述するが、終了の方針は2022年の年末にけってしたとのことなので、直接の終了の原因ではないように思われる。

ひろゆき氏の画像(スポニチアネックスの記事 https://news.yahoo.co.jp/articles/6f652c2a04a3ae03e968e299557ae3ec5239ec73/images/000 より)

 また、ひろゆき氏も今ではテレビ・コメンテーターやYouTubeの配信者として表立ってここ数年活躍しているが、過去には2ch運営者として誹謗中傷の被害を受けた被害者からの民事訴訟の損害賠償の請求を踏み倒して、日本を脱出しフランスに居住しているという経歴を持つ。若い人の中では、彼の過去をつまびらかに認識している人がどれだけいるか疑問なところだが。

  ひろゆき氏に関しては、日経新聞側が日経の名誉を毀損する可能性があるとして、あまり同氏の出演を好ましく思っていなかったのはどうやら確かなようだ。週刊文春の取材の中で、

「『訴訟を複数抱え、SNSでもたびたび炎上するひろゆきが出演しているのはいかがなものか』『日経ブランドを毀損している』などの指摘が出ました。

(週刊文春2023/2/15記事内で)

と文春の記事内で日経新聞社の内部の人物だとする者が匿名を条件に取材に答えたそうだ。

 実際、行政でも金融庁ひろゆき氏を起用した若者への資産形成を促すための対談動画2022年8月に公開するも、それがSNSでひろゆき氏出演に対して抗議する声が相次ぎ、2023年2月には公開を終了した。

 金融庁を所管する鈴木財務相は、制度変更に伴う「刷新」であると主張しているが、そうであるとしても「ひろゆき氏への非難」の声が1ミリも影響していないわけではないだろう。

 というわけで、ひろゆき氏の出演が日経の今回の決断の口実になった可能性は極めて高い。とはいえ、日経は番組の初期の頃から、ひろゆき氏を出演させており、当然日経側の了解を得ていたであろうから、番組終了の「言い訳」の一つとしてひろゆき氏が利用された側面が強いのではないだろうか。

(とはいえ、こうなることはなんとなく予感していたが)

 次に、元日経新聞記者で40代で日経を退職したのち、記者時代からやっていた経済ニュース等のTwitterを使い、一躍経済系インフルエンサーとなった後藤達也氏(42)について取り上げる。

 後藤氏の存在は日経テレ東大学が終了に至った大きな原因の1つかもしれない。というのは、後藤氏本人は同YouTubeチャンネル内のある企画の中で「会社を辞めた理由」について、プロデューサーの高橋氏に尋ねられ、円満退社であると主張している。

 だが、一部では後藤氏が日経記者を辞める際に記者時代のtwitterを継続して利用しようとしたものの、日経側の横槍で、新しいTwitterアカウントに移行させられたとの話も浮上しておりゴタゴタがあったのではないかとの声も上がっている。

 しかし、その後の後藤氏のTwitterのフォロワー数は37万人超で、有料のブログサイトnoteでもそれなりの収益を得る経済系インフルエンサーという見事な大成功をおさめた。おそらく、日経時代と同程度いやそれ以上の収入を得ているものと思われる。

 そのことに対して古巣の日経、少なくとも上層部はあまり彼のことをよく思っていなかったようだ。部下に対するおとしまいがつかないとか、ただでさえ報道で明らかになっている日経新聞社の若手の流出が加速していくのではという懸念もあるだろう。

 というわけで、日経新聞と後藤氏の間には浅からぬ因縁があるものと思われる。

 というか、「なんで仕事を辞めたんですか?」という企画を日経の番組で元日経の記者を出演させるという狂気じみた番組を作ってしまったプロデューサーもどうなのだろうかと思うが。しかもその後先に述べた「あつまれ!金融の森」などのレギュラー企画にも抜擢している。

 もちろん、そんなことで日経がこの番組を切ったならば、それは日経の度量があまりに小さく情けないと断じざるを得ないだろうが、プロデューサー側も煽っている感じがあるわけで、まあ仕方がない気もしないでもない。

 そして、最後にプロデューサーの高橋氏だ。テレ東の中でもバラエティー畑を歩んできた経歴からか、日経テレ東大学の企画はギリギリを責めたおそらく事なかれ主義の地上波では許容されないのではないかといったいい意味でもドキドキさせられるものが多かった。

 しかも、番組内では本人も時々MCとして出演することや、プロデューサーとして発言すると色々問題があるために身代わりとしてひらめパンダの格好をして声を加工して出演することもあった。

 ある意味で番組内で主役であった彼であるが、2月8日に2月いっぱいでテレ東からの退社を発表。度々、番組内では「俺、テレ東の常務を目指しているんで」という発言をしていただけに、SNS上では驚きの声が相次いでいた。

 日経テレ東大学が2月6日にチャンネル登録者数100万人を突破した際には、Twitterで

日経テレ東大学、チャンネル登録が100万人登録突破!
1年10ヵ月。文字通り命削って、寝食も忘れて走った日々でした!

そしてなぜか寝食忘れたのに、15kg太りました。 pic.twitter.com/Ndrh63Vooz

— 高橋弘樹 (@takahashi_ntu) February 6, 2023

 上のように述べていて、日経テレ東大学の制作においてかなりストレスがかかっていたようである。もちろん、物理的な作業による疲労もあるのだろうが、日経や関係先へ日経テレ東大学を存続させるための懸命な働きかけとそれによる精神的なストレスは相当なものであったのだろう。

 実は、退社発表の直前にはカルチャー系雑誌TOKION(トキオン)のインタビューに応じて応じている。そこでは、高橋氏の受け答えもどこか達観したような、かなり踏み込んだ発言も多い印象だった。

——『日経テレ東大学』のKPIってあるんですか?

高橋:もともとは制作側としては開始1年で登録者数30万人だったんですけど、それはすぐに達成して。今は明確に決まったものはなくて。100万人いったらいいよねっていうくらいで。

——今は97.5万人で、100万人もすぐにいきそうですね。高橋:2月中にはいきたいです。でも、ほんと気持ちいいですよね。僕はテレビを18年間やってきたんですけど、常に下方修正で。こんなに急激に成長する産業があるんだと思ったし、そういう場に身を置くべきだなと思いました。

(略)

——そうなると、やっぱりテレ東としてもYouTubeをどんどんやっていこうという流れなんですか?

高橋:いやそうはならなさそうです。僕もYouTubeが正解だとも思わないので。やった方がいいとは思うんですけど、そっちに全振りして、会社として今の社員の給料を維持するのは難しいと思います。大きな組織で、制作以外の人もいっぱいいるので。そこはゲームが破綻している部分でもあって。佐久間(宣行)さんも上出(遼平)も、稼げる制作の人が会社から抜けていってしまう。今後どうしていけばいいのか。そこはジレンマですよね。これはテレ東に限った話ではないと思いますけど。その中で、テレビのおもしろさを知っている人間がそれにどう抗っていくかっていうところですかね。

(略)

——最後に『日経テレ東大学』が今後目指すものは?

高橋:本当の大学みたいなものができたらおもしろいなと思っていて。多くの人はイェール大とかハーバード大の教授の授業を受ける機会ってないじゃないですか。だから『日経テレ東大』のリアルなスクールができたら、若い人が来たくなるんじゃないですか。結構いいと思うので、どこかお金を出してほしいです(笑)。

——日経との相性は良さそうですけど。

高橋:日経との相性良さそうでしょ! そこに日経が気づいてくれるかですね。本当にいいと思うので。

 上のように、今後について実際の大学のようなものを作りたいと公言し、かつ日経の下ではなくほかの人のサポートを懇願しているように見え、もう日経の下では仕事をしないという意思みたいなものが、感じられるインタビューであった。

 また、相変わらず「テレ東の常務になる」という野望を冗談めかして言いながらも、今後の目標はないことやテレ東での番組制作の限界などをにおわせており、あまり先行き

4.番組内容の問題

5.日経・テレ東の構造的問題

6. 外部の問題

7.まとめ

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